安全運転管理者とは ~これから安全運転管理者になる方へ向けたキホンの”キ”~

企業が一定台数以上の車両を業務で使用する場合、業務における運転の安全や責任を各ドライバーに任せてはいけません。組織として安全運転を管理するため、道路交通法第74条の3に基づいて設けられているのが「安全運転管理者制度」です。
本記事では、安全運転管理者の役割や選任条件、業務内容、さらには違反時の罰則まで、わかりやすく解説します。
目次
■安全運転管理者制度とは
安全運転管理者制度は、自家用自動車を使用する事業所等における交通事故の防止を目的に、昭和40年6月の道路交通法の一部改正により制度化されたものです。
本制度では、一定台数以上の自動車を使用する事業所において、安全運転管理者と、必要に応じてそれを補助する副安全運転管理者を選任して、事業所等における安全運転管理責任の明確化と交通事故防止体制の確立を図ることが求められています。
■安全運転管理者の選任が必要となる条件

以下のいずれかの要件を満たす事業所では、安全運転管理者の選任が必要です。
②自動車を5台以上保有している事業所
※自動二輪車(50ccを超えるもの)は0.5台として計算
③自動車運転代行業者
また、自動車を20台以上保有する事業所では20台につき1名の副安全運転管理者の選任が必要です。

■安全運転管理者が行うべき業務
道路交通法施行規則第九条の十(安全運転者の業務)では、安全運転管理者が行うべき業務として以下の9項目が挙げられています。
1. 運転者の適正及び法令順守状況の把握
ドライバーとなる方の適正、技能、知識、及び法令順守の状況を把握するための措置を講じる必要があります。
どこまでの管理をどのレベルでやるべきかの明確な指針はないものの、状況把握をしっかりと行うための方策としては、「運転適性検査の活用」や「運転記録証明書の確認」等の方法が考えられます。
2. 安全運転確保のための運行計画の作成
過積載や過労運転を防止し、その他安全な運転な運転の確保を留意した運行計画を作成する必要があります。
ざっくり言うと「いつ・どこで・何を」するのかという観点で計画を立てるイメージです。道路状況を加味して出発時間を前倒しして計画を立てたり、休憩の時間や場所を指定する等のアドバイスも安全運転を実現する上では有効に働くでしょう。
3. 長距離、夜間運転時の交代要員の配置
運転者が長距離の運転や夜間の運転に従事する際、疲労などにより安全な運転を継続できない恐れがある時は、あらかじめ交代の運転者を配置する必要があります。
単純な走行距離や運転時間のみから判断をするのではなく、休暇の取得状況や残業の状況といった日々の勤務状況から総合的な判断を行うことが良いのではないでしょうか。
4. 異常気象時等の安全確保の措置
異常な気象、天災その他の理由により、安全な運転の確保に支障が生ずるおそれがあるときは、運転者に対する必要な指示その他安全な運転の確保を図るための措置を講じる必要があります。
昨今では台風や大雪などの異常気象、大地震といった天災が多く発生しています。事前に予測が出来る場合は運行計画の見直しや適切な指示事項の伝達などを行うことが有効でしょう。加えて、異常気象や天災発生時の行動マニュアルの作成と周知徹底を行うことも安全確保には有効な対策と言えるでしょう。
5. 点呼等による安全運転の指示
運転者に対して点呼を行う等により、車両点検の実施及び過労、病気その他の理由により正常な運転をすることができないおそれの有無を確認し、安全な運転を確保するために必要な指示を与える必要があります。
点呼の際のチェック項目や車両点検時のチェック項目などをしっかりと整備しておくことで、抜け漏れなく確認が行えます。

6. 運転者の酒気帯び有無の確認
運転しようとする運転者及び運転を終了した運転者に対し、酒気帯びの有無について、当該運転者の状態を目視等で確認する必要があります。
令和5年12月1日からは、アルコール検知器を使用した呼気の測定が義務付けられており、アルコールチェック管理の厳格化が進んでいます。
7. 酒気帯び有無の確認内容の記録・保存
酒気帯び有無の確認内容を記録し、その記録を一年間保存する必要があります。
記録書式や保管の方式には細かな定めがなく、決まっているのは記録項目と一年間という保存期間です。
そのため、表計算ソフトや紙による管理でも法令上は問題ありません。しかし、アナログ管理に限界を感じる企業が多く、法令遵守及び効率的管理の観点でクラウドサービスの導入を検討するケースも増えています。
8. 運転日誌の備え付けと記録
運転者名、運転の開始及び終了の日時、運転した距離その他自動車の運転の状況を把握するため必要な事項を記録する日誌を備え付け、運転を終了した運転者に記録させる必要があります。
運転日誌から得た情報(ヒヤリハット等)を運行計画の作成などに活用することで、安全運転に関する取り組みを日々アップデートしていくことができるでしょう。
9. 運転者に対する安全運転指導
運転者に対し、自動車の運転に関する技能や知識、その他安全な運転を確保するため必要な事項について指導を行う必要があります。社内で安全運転に関する定期的な講習会を実施するなどの方法もありますが、内部リソースでの対応が難しい場合には、外部の講師に委託するなどの工夫を取り入れても良いのではないでしょうか。
■安全運転管理者に関する罰則
企業や事業所は、一定台数以上の車両を業務で使用する場合、安全運転管理者の選任や届出を行う必要があります。それでは、これらの義務を怠るとどのような罰則があるのでしょうか。以降で詳しく解説します。

安全運転管理者を選任しなかった場合の罰則
安全運転管理者等の選任義務があるのにも関わらず、選任を怠った場合、道路交通法に基づき、50万円以下の罰金が科されます。罰金額は、2022年10月に施行された法改正前の5万円以下から、大きく引き上げられています。
安全運転管理者を届け出なかった場合の罰則
選任だけではなく、その後の届出を怠った場合も罰則の対象です。選任の届出のみならず、変更や解任の際の届け出を怠った場合も罰則の対象とされています。これらに該当する場合、5万円以下の罰金が科されます。罰金額は、2022年10月に施行された法改正前の2万円以下から、大きく引き上げられています。安全運転管理者の選任を行って安心するのではなく、必ず正しく届出を行いましょう。
■安全運転管理者の資格要件と届出の流れ
安全運転管理者は、企業や事業所で使用する車両の保有台数が一定台数に達した場合、必ず安全運転管理者を選任しなくてはなりません。ここでは安全運転管理者の資格要件と届出手続きの流れについて説明します。
安全運転管理者の資格要件
安全運転管理者の資格要件は以下のとおりです。
要件項目 | 基準 |
---|---|
年齢 | 20歳(副安全運転管理者を置く事業所にあっては30歳)以上 |
その他の要件 | 以下のいずれかに該当する方 ・運転管理実務経験2年以上 ・公安委員会の認定を受けている (専務・部長・課長等で、事業所等の従業員を指導、車両を管理できる地位の方が望ましい。) |
業務内容の性質上、実務能力とリーダーシップの両方が求められるため、単なる形式的な人選ではなく、管理体制を整備し、着実に実行できる人材を選定することが重要です。
届出の流れ
安全運転管理者の選任が完了したら、以下の手順に沿って警察署へ届出を行います。
- 必要書類の準備
安全運転管理者の選任届出時には以下の書類が必要になります。- 安全運転管理者に関する届出書
- 戸籍抄本、住民票の写し、または運転免許証の写し等のいずれか
- 車両管理の実務経験が2年以上ある場合は、運転管理経歴証明書
- 車両管理の実務経験が2年未満の場合は、安全運転管理者資格認定申請書
- 運転記録証明書(1か月以内発行日付のもの、かつ、3年間以上のもの)
- 各書類は、インターネットでダウンロードできるものが多いですが、運転記録証明書は自動車安全運転センターにて発行を行う必要があります。証明書が発行されるまで通常10日程度かかるようなので、早めに申請することをお勧めします。
※参考:運転経歴に係る証明書 (自動車安全運転センター)
- 管轄警察署へ提出
作成した書類は、事業所所在地を管轄する警察署の交通課へ提出します。郵送やオンラインでの申請を受け付けているケースも多くありますので、詳しくは都道府県警察HPの安全運転管理者ページで確認しましょう。
■年に一度、法定講習の受講が必要
自動車の使用者(事業主等)には、公安委員会から安全運転管理者又は副安全運転管理者に対する講習を行う旨の通知を受けた際に、当該安全運転管理者等に講習を受けさせなければなりません。(道路交通法第七十四条の三 第九項)
このため、安全運転管理者又は副安全運転管理者に選任された方は、これらの法定講習を受ける必要があります。
講習の受講時間は、安全運転管理者が6時間、副安全運転管理者が4時間とされていますので、ほぼ一日の業務時間を費やすことになります。ご自身の会社の安全運転管理に責任を持つ重要な役目として、しっかりと受講しましょう。
■最後に:アルコールチェック管理は『デジタル点呼マネージャー・スマート』で!
インフォセンスのデジタル点呼マネージャー・スマートは、アルコールチェックデータの一元管理を可能とするクラウドサービスです。安全運転管理者の業務である「酒気帯び有無の確認」を効率的かつ確実な遂行を支援します。
時と場所を選ばないアルコール測定、アルコール検知時の即時通知などはもちろん、大規模組織での運用に適した、柔軟なアクセス権のコントロールも可能です。
安全運転管理業務の効率的運用をご検討される際には、アルコールチェック管理から見直してみてはいかがでしょうか。
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