③交通事故や違反を未然に防止すること
講習では、実際の事故や違反事例をもとに、どのような管理上の不備が事故につながるのか、再発防止のために何を徹底すべきかが解説されます。これにより、安全運転管理者が日常の点呼や指導において注意すべきポイントを具体的に理解し、事故や違反の未然防止につなげることが期待されています。
これらの目的を実現するため、安全運転管理者講習は道路交通法第74条の3第9項に基づき、各都道府県の公安委員会が実施しています。安全運転管理者および副安全運転管理者は、通知を受けた場合、指定された期間内に講習を受講する義務があります。
つまり、安全運転管理者講習は形式的な研修ではなく、制度の目的である「事故防止」と「法令遵守」を、実務レベルで確実に実現できているかを確認・再認識するための制度といえます。この位置づけを理解しておくことで、後述する講習内容や日常業務で求められる対応の意味が、より明確になります。
※安全運転管理者講習は、道路交通法 第七十四条の三 第9項に基づいて実施されています。
受講対象となるのは、事業所において選任されている安全運転管理者と副安全運転管理者です。両者はそれぞれ役割が異なるため、講習内容や講習にかかる時間も若干異なります。
一方で、日常的に管理者をサポートする補助者については、法令上の受講義務はありません。補助者は選任の届出も不要であり、講習通知が届く対象にも含まれないため、講習を受ける必要はありません。
なお、代理受講は認められておらず、管理者本人が受講することがルールです。業務都合などで指定日に受講できない場合は、通知書の案内に従い、別日程で受講する必要があります。
初めて安全運転管理者に選任された場合は、選任届の提出と並行して、講習案内がいつ、どこに届くのかを社内で確認しておきましょう。
前任者宛に通知が届いたまま放置されているケースもあるため、総務・人事部門と連携して、郵送物の宛名や管理方法を見直しておくと安心です。
④安全運転管理の実務知識と技能の習得
安全運転管理者に求められる基本業務や、交通安全リスクマネジメントに関する内容を学びます。
これらのテーマは、道路交通法施行規則第9条の10で定められた「安全運転管理者の9つの業務」とも密接に関係しています。例えば、酒気帯びの有無の確認や記録保存に関する講義は、第6〜7号の業務にそのまま対応する内容です。
講習では、「自社の運用で不足している点はどこか」「システムやルールの見直しが必要な点はどこか」という視点で聞くと、実務に活かしやすくなります。
なお、飲酒運転防止やアルコールチェック義務化の最新ルールについては、下記の記事でも詳しく解説しています。講習内容の理解をさらに深めたい方におすすめです。
安全運転管理者講習は、制度や法的根拠を理解するだけで完結するものではなく、実際に「いつ・誰が・どのように」受講し、その後の業務にどう活かすかまでを含めて対応する必要があります。
実務の現場では、通知への対応、受講日の調整、当日の準備、受講後の社内対応など、制度解説だけでは判断しづらい具体的な対応が求められる場面が少なくありません。
この章では、安全運転管理者講習を実際に受講する際に、実務担当者が押さえておくべきポイントを、「通知を受け取る → 日程調整 → 受講 → 修了後対応」という実務の流れに沿って整理します。
制度の解説や講習内容の説明を踏まえたうえで、「実際の業務としてどう動けばよいのか」を確認するための実務ガイドとしてご活用ください。
安全運転管理者講習は、年に1回受講することが義務です。開催時期や開催される回数は都道府県ごとに異なりますが、多くの地域では年度内に複数の開催日が設けられているため、業務を調整し受講する必要があります。所要時間については、法令で次のように規定されています。
安全運転管理者講習:6時間以上10時間以下
副安全運転管理者講習:4時間以上8時間以下
いずれも一日かけて実施されることが多く、途中退席や遅刻は未受講扱いとされる場合があるため、当日は時間に余裕を持って参加することが大切です。
実務の現場で企業担当者の方々にお話を伺うと、決算月や繁忙期を避けて受講スケジュールを早めに確保している企業が多いと感じます。
決算月や繁忙期と受講日程が重なると、現場の負荷が一気に高まります。そのため、多くの企業では「年度の前半に受講を済ませる」「安全運転管理者・副安全運転管理者が別々の日程で受講し、どちらかは常に事業所にいる状態を確保する」といった工夫をしています。
※講習時間は道路交通法 第三十八条により規定されています。
まず、各都道府県の公安委員会から講習の案内や通知書が送付されます。通知書には、日時・会場・費用・申し込み方法などの必要事項が記載されているため、内容を確認したうえで、社内の業務予定と照らし合わせながら受講日程を調整します。
申し込み方法は自治体によって異なります。事前申請が必要な地域もあれば、通知書に記載された日時にそのまま会場へ向かうだけで受講できる地域もあります。また、一部の自治体ではオンライン形式の講習を導入しており、地域によっては受講方法を選べる場合もあります。
講習は、所定の時間をすべて受講することで「修了」となります。
修了した場合には、修了証が交付され、当該年度において安全運転管理者講習を受講したことの公式な証明となります。
修了証は、行政からの確認や社内監査、事故発生時の説明資料として求められる場合があるため、受領後は紛失しないよう社内で適切に保管しておくことが重要です。
安全運転管理者講習の受講には、所定の講習手数料が必要です。本記事執筆時点(2025年11月)で、多くの都道府県では次の金額が案内されています。
安全運転管理者講習:5,100円(非課税)
副安全運転管理者講習:3,400円(非課税)
ただし、講習手数料は各都道府県がそれぞれの警察手数料条例により異なる場合があります。必ず最新の通知書や警察の案内で確認してください。 納付方法も自治体によって異なり、以下のような方法があります。
事前に収入証紙を購入する方式
講習当日に会場で支払う方式
キャッシュレス決済に対応しているケース
実際の納付方法がどのようなものか、通知書の記載内容を事前に確認しておきましょう。
安全運転管理者講習を受講する際には、次の点に注意が必要です。
講習開始時間に遅れると受講できない場合がある
受付締切後の入場は認められないことが多いため、時間に余裕をもって会場へ向かいましょう。
会場に駐車場がない場合が多い
基本的に公共交通機関の利用が推奨されています。車での来場を予定している場合は、周辺駐車場の有無を事前に確認しておきましょう。
代理者による受講は不可
講習は選任された本人(安全運転管理者または副安全運転管理者)が必ず出席する必要があります。代理受講は認められていません。
途中退席や中抜けは認められない
全時間を通して受講することが条件です。途中で退席した場合は修了とみなされず、再受講が必要になります。また、納付した受講費用は還付されないことにも注意が必要です。
これらが原因で受講が無効になる場合もあるため、事前にスケジュールや交通手段をしっかり確認しておくことが重要です。
一部の都道府県では、安全運転管理者講習をオンライン形式(Web講習)で実施している場合があります。オンライン受講は会場へ移動する必要がない一方、対面講習とは異なる点に注意が必要です。
同じ都道府県内であっても、公安委員会の運用方針や年度ごとの実施計画により、実施形式が異なることがあります。オンライン受講が可能かどうかは、通知書や管轄警察署の案内で必ず確認してください。
オンライン講習であっても、代理受講は認められず、選任された本人が受講する必要があります。受講中は本人確認のためにカメラの使用が求められる場合があり、長時間の離席などがあると未受講と判断される可能性があります。
また、通信環境や使用端末にも注意が必要です。インターネット接続が不安定な場合、受講が成立しないこともあるため、事前に環境や機器の確認を行っておくことが重要です。
原則として、オンライン講習であっても受講時間や講習内容は対面講習と同等に扱われ、修了条件が緩和されることはありません。オンライン形式は移動負担を軽減できる手段の一つですが、受講条件や注意点を理解したうえで利用することが求められます。
安全運転管理者制度は、道路交通法に基づき、一定規模以上の車両・乗車定員を持つ事業所に対して、交通安全管理体制の構築と維持を義務付ける仕組みです。制度の目的は、事業所における交通事故の防止と法令遵守の徹底、運転者の適正な管理を通じて、安全運転の確保を図ることにあります。
この制度に基づき、一定条件を満たす事業所は安全運転管理者を選任し、公安委員会あてに届出を行う必要があります。また、台数や事業の種類に応じて副安全運転管理者や補助者を配置することが義務付けられる場合もあり、管理体制は事業規模に応じて強化されます。
安全運転管理者は、運転者の日常的な管理や点呼・アルコールチェック、運転日誌の整備・保存といった業務を通じて、事故や違反の未然防止に寄与する役割を担います。また、制度違反に対しては罰則が設けられており、選任・届出・義務違反があった場合には罰金等の行政処分の対象となる点にも注意が必要です。
本記事では詳細な制度内容を割愛していますが、制度の要点や選任基準、義務内容を実務レベルで丁寧に整理した参考記事を以下にご案内します。あわせてご覧いただくことで、安全運転管理者制度全体の理解がさらに深まります。
安全運転管理者講習では、点呼、アルコールチェック、記録保存などについて、法令に基づいた実務レベルの運用基準が示されます。これらは「理解していればよい」ものではなく、毎日・確実に・同じ品質で続けることが前提です。 一方、現場では
「内容は理解できても日常業務の中で継続できない」
「紙やExcelでは管理が追いつかない」
「拠点が増えるほど集計が破綻する」
といった悩みが多く聞かれます。
講習で示される運用水準は年々具体化・高度化しており、担当者の努力だけで維持するには限界がある水準になりつつあります。
この章では、講習で求められる運用を日常業務で確実に続けるために、現場で押さえておくべきポイントと、近年多くの企業が取り入れている「仕組み化」という考え方を整理します。