IT点呼 vs 遠隔点呼|メリット・デメリット・導入要件をわかりやすく解説

かつてのコロナ禍において、我が国ではオンラインコミュニケーションの手段が大きく発展しました。
当時は多くの企業でリモートワークが一般化しましたが、その大きな要因として、オンライン会議やビジネスチャットなどのITツールの普及によって、従来よりもリアルタイムなコミュニケーションが可能となった点が挙げられるでしょう。
一方で、運送業は人や機械が物理的に動くことがサービスの本質であるため、本業のオンライン化が難しい業種に数えられています。
そのような運送業界でも、人手不足解消や労働環境改善を目的とした働き方改善の取り組みが進んでいます。
今回は、運送業界におけるオンラインコミュニケーションの代表例としてIT点呼と遠隔点呼を取り上げつつ、その違いについて解説します。
■点呼の種類と基本的な違い
運送業において、ドライバーの安全運行を確保するための重要な業務の一つが「点呼」です。従来の点呼は、運行管理者とドライバーが対面で行うのが一般的でしたが、時間や場所に制約があるという課題がありました。特に、複数の営業所を持つ企業や夜間運行が多い企業にとっては、大きな負担です。
そこで、業務効率化と安全性の向上を目的に導入が進んでいるのが「IT点呼」と「遠隔点呼」です。どちらもIT機器を活用して点呼を行うという点では共通していますが、その内容や導入要件には明確な違いがあります。
IT点呼は、パソコンやスマートフォンなどの情報端末と、アルコール検知器などを組み合わせて行う比較的手軽な点呼方法です。一方、遠隔点呼は、より高度な機器とシステムを用いて、遠隔地間で対面点呼と同等の確認を行うことを目的としています。
IT点呼と遠隔点呼は、点呼を行う場所、使用する機器、対象とする範囲などが大きく異なり、それぞれに適した運用方法があります。次のブロック以降では、それぞれのメリット・デメリットや導入要件について詳しく解説していきます。
(各種点呼方法と概要弊社ホワイトペーパーより抜粋)
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■IT点呼のメリット・デメリットと導入要件
IT点呼は、比較的導入しやすい点が大きな特徴です。主なメリットは以下の通りです。
- コスト削減: 遠隔点呼に比べて機器導入コストを抑えられます。既存のパソコンやスマートフォンなどを活用できる場合もあります。
- 省力化: 点呼記録の自動作成やデータ管理の効率化により、運行管理者の業務負担を軽減できます。
- 記録管理の効率化: デジタルデータとして記録が保存されるため、検索や管理が容易になります。紙媒体の保管スペースも不要になります。
一方で、デメリットも存在します。
- 機器導入コスト: パソコン、スマートフォン、アルコール検知器などの機器を揃える必要があります。
- 通信環境への依存: インターネット環境が不安定な場所では、点呼がスムーズに行えない可能性があります。
IT点呼の導入要件は、国土交通省が定める「IT点呼の実施について」に基づいています。主な要件は以下の通りです。
- 適切な機器の使用(アルコール検知器、カメラなど)
- 点呼状況の記録と保存
- 運行管理者による適切な管理体制の構築
■遠隔点呼のメリット・デメリットと導入要件
遠隔点呼は、より高度な安全管理を求める企業に適しています。主なメリットは以下の通りです。
- 広範囲な点呼実施: 複数の営業所や遠隔地のドライバーに対して、対面点呼と同等の確認を行うことができます。
- 高度な安全管理: カメラ映像や音声を通じて、ドライバーの状況をより詳細に把握することができます。
- 法令遵守の徹底: より厳格な要件を満たしているため、監査などにも有利になります。
デメリットとしては、以下の点が挙げられます。
- 高額な導入コスト: 高度な機器やシステムを導入する必要があるため、コストが高くなります。
- 厳格な要件: 機器の性能、設置場所、運用方法など、国土交通省の定める厳格な要件を満たす必要があります。
遠隔点呼の導入要件は、「遠隔点呼実施要領」に基づいています。
IT点呼では基本的に必要と定められているGマークが不要である代わりに、システムや環境、運営体制といった条件においては、IT点呼よりも厳しい基準が設けられています。
具体的な要件については、国土交通省のホームページなどで確認する必要があります。
(IT点呼と遠隔点呼の比較 弊社ホワイトペーパーより引用加工)
どなたでも無料でダウンロード後に閲覧いただけます。
■自社に最適な点呼方式の選び方
IT点呼と遠隔点呼のどちらを選ぶかは、企業の規模、事業形態、予算などによって異なります。
- 小規模事業者や予算を抑えたい場合: IT点呼が適しています。
- 複数の営業所を持つ企業や、より厳格に管理したい場合: 遠隔点呼が適しています。
いずれかの導入を検討する際には、以下の点に注意する必要があります。
- 導入目的を明確にする
- 必要な機能を洗い出す
- 複数のシステムを比較検討する
- 導入後の運用体制を整備する
■まとめと今後の展望
この記事では、運送業における点呼業務の効率化に役立つIT点呼と遠隔点呼の違いについて詳しく解説しました。従来の対面点呼が抱える課題を解決するために登場したこれらのシステムは、それぞれ異なる特徴とメリット、デメリットを持っています。
改めて、両者の違いをまとめると以下のようになります。
- IT点呼: 比較的安価に導入でき、点呼記録の電子化や業務効率化に貢献します。小規模事業者やコストを抑えたい企業に適しています。
- 遠隔点呼: 高度な機器とシステムを必要とするため導入コストは高くなりますが、遠隔地との点呼や詳細な状況確認が可能となり、より高度な安全管理を実現します。複数の営業所を持つ企業や、安全管理を最重要視する企業に適しています。
どちらのシステムを選択するかは、企業の規模や事業形態、予算、そして最も重視する点(コスト効率か、安全性か)によって異なります。導入を検討する際には、それぞれの特徴を十分に理解し、自社に最適なシステムを選択することが重要です。
今後の点呼システムは、AI技術やIoT技術との連携が進み、さらに進化していくかも知れません。例えば、AIによるドライバーの表情分析や運転状況の自動評価、IoTセンサーによる車両状態のリアルタイムモニタリングなどが実現すれば、より高度な安全管理と業務効率化が可能になるのではないかと、筆者はひそかに期待しています。
また、法規制の改正や技術革新によって、新たな点呼方式が登場する可能性もあります。運送者の皆さんは、常に最新の情報にアンテナを張り、安全性と効率性を考慮しながら、新しい点呼方法を構築していくべきでしょう。
最後に、今回の記事が、運送事業者の皆様が点呼業務の効率化と安全管理の向上を図る上で、少しでもお役に立てれば幸いです。IT点呼・遠隔点呼システムにご興味をお持ちの方、導入をご検討の方はお気軽にお問い合わせください。専門のアドバイザーが、お客様の状況に合わせて最適なソリューションをご提案いたします。