運転日報とは?記載項目や最適な管理方法を解説

この記事の概要
「運転日報」とは、運転者の労働時間や走行距離、安全管理の状況など、企業の運行管理に欠かせない情報を記録するものです。
本記事では、白ナンバー・緑ナンバーそれぞれに求められる運転日報の記載項目や保存義務について解説します。さらに、クラウドサービスを活用したデジタル管理のメリットや、アルコールチェックと運転日報を一元管理できる最新クラウドサービスの利点についても紹介します。
目次
■運転日報とは
運転日報とは、業務で自動車を使用する際に、運転者の氏名・運転の開始時刻・終了時刻・走行距離などを記録する日報を指します。
緑ナンバーの貨物運送業では、貨物自動車運送事業輸送安全規則に基づき運行記録の作成が義務付けられています。また、白ナンバーの事業所でも、道路交通法施行規則により運転日誌の備付けが義務化されています。
運転者が日々の運転内容を記録することで、企業は安全運転の推進や労務管理の改善に役立てることができます。
さらに、運転日報はコンプライアンス強化に欠かせない要素であり、事故防止や業務効率化の観点からも非常に重要です。
■運転日報の目的とその重要性
運転日報の主な目的は、運転者の労務状況を把握しながら安全運転を推進し、事故の未然防止や業務効率の向上を図ることです。
例えば、走行距離や業務時間を記録することで、過度な労働の兆候を早期に把握でき、過労運転の防止につながります。さらに、記録されたデータを活用すれば、車両稼働率の最適化や燃料費の管理など、経営面での改善にも役立ちます。
このように運転日報の活用は、企業のコンプライアンス強化に直結するだけでなく、社会的責任(CSR)の遂行にも大きく寄与します。
■運転日報の作成を義務付けられている業種
運転日報の作成は、運送業に限らず、社用車を業務で使用する多くの企業に義務付けられる場合があります。
たとえば、緑ナンバーの貨物運送事業者では、貨物自動車運送事業輸送安全規則第8条に基づき、業務記録の作成・保存が義務付けられています。一方、白ナンバー車両を一定台数以上保有する企業でも、道路交通法施行規則第9条の10により、安全運転管理者に「運転日誌」の備付けと記録が義務付けられています。
また、業種や車両の使用目的によって、運転日報に記載すべき項目は異なります。そのため、企業ごとに最適化されたフォーマットを整備することが重要です。
たとえば、運送業では運行指示・貨物の積載情報・運転経路など詳細な記録が必要です。一方、営業活動を行う企業では、顧客訪問の内容や営業効率に関する情報も有用な記録として扱われます。
■運転日報の記載項目
運転日報に記載すべき項目は、企業の業態や車両の運用形態によって異なります。
特に、運送事業者(緑ナンバー)と、安全運転管理者の選任が必要な一般事業者(白ナンバー)とでは、法令で定められた記録義務の範囲が異なります。
ここでは、緑ナンバーの中でもトラックなどを使用する貨物自動車運送事業者に焦点を当て、白ナンバー事業者とあわせて、運転日報に求められる主な記載項目を整理して解説します。
記録項目 | 緑ナンバー (貨物自動車運送事業者) |
白ナンバー (安全運転管理者選任対象事業所) |
---|---|---|
運転者名 | ● | ● |
乗車した自動車の登録番号または識別表示 | ● | - |
業務開始地点 | ● | - |
業務終了地点 | ● | ● |
業務開始日時 | ● | ● |
業務終了日時 | ● | ● |
主な経過地点 | ● | - |
走行距離 | ● | ● |
業務交代が発生した場合の地点・日時 | ● | - |
休憩または睡眠をとった場合の地点・日時 | ● | - |
貨物の積載、集荷、荷役作業の状況 | ● | - |
交通事故や異常の概要及び原因 | ● | - |
運行指示の内容 | ● | - |
その他自動車の運転状況を把握するために必要な事項 | - | ● |
共通項目
緑ナンバー(貨物運送事業者)と白ナンバー(安全運転管理者選任事業所)では、制度上、運転日報に記録すべき項目が一部異なります。しかし、両者に共通して法令で記録が義務付けられている基本項目も存在します。
- 運転者の氏名
- 運転の開始および終了の日時
- 運転した走行距離
これらは、運転者の労働時間や稼働状況、安全運転の実態を把握するための基礎情報であり、労務管理や運行管理の出発点となる重要な項目です。
緑ナンバー(貨物自動車運送事業者)の場合
運送業における運転日報は、一般事業者よりもさらに詳細な記録が求められます。これは輸送の安全確保やドライバーの過重労働防止を目的としたもので、貨物自動車運送事業輸送安全規則(第8条第1項)に基づき以下の項目が定められています。
これらの項目に漏れがあると、法令違反と見なされる可能性があります。
基本情報
- 運転者の氏名
- 運転の開始および終了の日時
- 走行距離
- 乗車した車両の自動車登録番号または識別表示
運行状況に関する情報
- 業務開始・終了の地点
- 主な経過地点
- 業務交代が発生した場合は、その地点と日時
- 休憩または睡眠をとった場合は、その地点と日時
安全・事故管理に関する情報
- 貨物の積載、集荷、荷役作業などの状況(※大型車両のみ)
- 交通事故や異常が発生した場合は、その概要および原因
- 運行指示の内容(※指示があった場合)
白ナンバー(安全運転管理者選任対象事業所)の場合
白ナンバーで一定台数以上の車両を保有し、安全運転管理者の選任が義務付けられている事業所では、道路交通法施行規則(第9条の10)に基づき、以下の4項目を記録する必要があります。
- 運転者の氏名
- 運転の開始および終了の日時
- 運転した走行距離
- その他、自動車の運転状況を把握するために必要な事項
この「必要な事項」は抽象的で、具体的な内容は各事業所の判断に委ねられています。実際には次のような情報を追加で記録することで、法令遵守だけでなく車両管理・勤怠管理・経費管理の強化に活用されるケースが多く見られます。
「必要な事項」の記載例
これらは法定必須項目ではありませんが、企業の安全運転管理を実務的に強化するうえで有効な情報となります。
- 運転した車両の車両番号や識別番号
- 訪問先や運転目的地
- 同乗者の氏名
- 車両点検の実施有無
- 給油の有無、および給油量とその料金
- 有料道路の利用有無、およびその料金
■運転日報の書き方
運転日報には、特定の書式やフォーマットに関する厳密な規定はありません。重要なのは、法令で義務付けられた記録項目を正確かつ漏れなく記入することです。紙の様式でも、Excelや専用システムといった電子データでも、記録内容が正確であれば形式は問われません。
また、記載を効率的に行うために、テンプレートを導入する企業も少なくありません。ここでは、運送業を営む緑ナンバー事業者と、白ナンバー車両を業務で利用する一般事業者、それぞれに適した運転日報テンプレートを紹介します。
緑ナンバー用運転日報テンプレート
各都道府県のトラック協会では、貨物自動車運送事業者向けの運転日報テンプレート(Excel・PDF形式)を公開しています。これらは法令で定められた記録項目を網羅しており、記入漏れや記録ミスを防ぐうえで非常に効果的です。
さらに、無料でダウンロードできるうえ、業種や企業規模に合わせてカスタマイズも可能なため、事業の特性に即した運転日報作成を実現できます。

引用元:帳票類|適正化事業実施機関|一般社団法人 群馬県トラック協会
白ナンバー用運転日報テンプレート
白ナンバー(安全運転管理者選任事業所)の場合も、運転日報について特定の様式やフォーマットは定められていません。法令で義務付けられた必要項目を記録していれば、紙でもExcelでも自由な形式で管理可能です。
実際の現場では、法定項目に加えて「訪問先」「運転目的」「車両番号」「同乗者情報」「点検・給油記録」「アルコールチェック結果」などを一元的に記録するケースが多く見られます。これにより、車両管理・勤怠管理・経費精算など複数の業務に活用でき、業務効率の向上にも直結します。
こうした背景から、あらかじめ必要項目を整理したテンプレートを活用して運転日報を整備する企業が増えており、初めて導入する企業にとっても便利な手段となっています。 以下の各サイトでは、それぞれ運転日報のフォーマットを無料でダウンロードできます。自社の運用に合わせてカスタマイズして使用することも可能です。
■運転日報の保存期間
運転日報は単なる日々の記録にとどまらず、労務管理や法令遵守の観点からも重要な帳票です。保存期間については、事業区分ごとに定められた基準があり、適切に保管しておく必要があります。ここでは、緑ナンバー事業者(貨物運送業者)と白ナンバー事業者(安全運転管理者選任対象事業所)に分けて、保存期間の違いやその根拠について解説します。
緑ナンバーの場合
緑ナンバーの貨物自動車運送事業者においては、「貨物自動車運送事業輸送安全規則」第八条に基づき、運転日報は1年間の保存が義務付けられています。 万が一の監査や事故調査時において、運転日報は重要な証拠書類として提出を求められることがあるため、適切な保存体制を整えておくことが必要です。
白ナンバーの場合
白ナンバー事業者においても、道路交通法施行規則第9条の10第8号により、運転日報の記録・保存義務が定められています。ただし、規則上は保存期間が明示されていません。 そのため、実務上の保存期間の目安としては、以下の観点が参考になります。
- アルコールチェック記録の保存期間は1年間と同規則第9条の10第7号で明示されているため、運転日報も併せて少なくとも1年間は保存するのが適切です。
- 運転日報は行政から提出を求められるケースがあるため、証拠保全の観点から1年以上保存しておくことが望ましいと考えられます。
すべての事業者に共通する法的観点
運転日報の保存期間については、貨物運送業や安全運転管理者選任事業所としての法令だけでなく、労務管理の観点から労働基準法との関係も考慮する必要があります。 労働基準法第109条(記録の保存)では、次のように定められています。
労働基準法第百九条
使用者は、労働者名簿、賃金台帳、および雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない。
この規定を踏まえると、運転日報も労働時間管理に関連する帳簿類と位置づけられるため、最低5年間の保存が推奨されます。
運転日報には、運転者の労働時間や業務の実態が記録されることが多いため、企業によってはこれを「労働関係に関する重要書類」と位置づけ、労働基準法に基づく保存義務に準じて5年間保管するケースも見られます。
ただし、運転日報が必ずしも労働基準法上の保存義務対象として明記されているわけではなく、その取り扱いは各企業の実務運用や解釈によって異なる可能性がある点に注意が必要です。
なお、2025年7月現在は、労働基準法第143条による経過措置が適用されており、帳簿書類の保存期間については当面の間、3年間で差し支えないとされています。
■運転日報の記録義務を怠った場合のリスク
運転日報の記録義務を怠ることは、企業にとって深刻なリスクを引き起こします。これらのリスクは、法的問題から安全・信用上の問題まで幅広く及び、事業継続に直接影響する可能性があります。
リスク | 詳細 |
---|---|
法的制裁 | 運転日報の未記録は道路交通法や輸送安全規則違反にあたり、行政監査や是正指導、罰則の対象となります。重大な場合には事業停止処分に至ることもあります。 |
労務管理の不備 | 労働時間や休憩時間の把握が不十分となり、過重労働のリスクが高まります。その結果、労働基準監督署からの是正指導や労使間の訴訟につながる可能性があります。 |
安全対策の弱体化 | 運行経路・休憩地点・異常発生時の記録が残らず、事故時の原因検証や再発防止が困難になります。結果として、安全管理体制に不備があると見なされるおそれがあります。 |
社会的信用の失墜 | 日報未整備が明らかになると、顧客や取引先から「安全意識やコンプライアンス意識が低い」と評価され、契約打ち切りや新規取引への悪影響につながります。 |
このように、運転日報の記録義務を怠ることは、法的問題・安全管理・労務管理・社会的信用のすべてに影響を及ぼす重大なリスクです。リスクを回避するためにも、日々の運転日報を確実に記録・管理することが不可欠です。
■運転日報の管理方法

運転日報の管理方法には、大きく分けて紙による記録・保管 と、Excelやクラウドサービスなどを活用した電子管理 の二種類があります。
どの方法を選択するかは、企業の業務体制や運用目的によって異なりますが、それぞれに明確なメリットとデメリットが存在します。
紙媒体として管理
紙の運転日報は、導入コストがかからず誰でも手軽に記入できることから、現在も多くの現場で利用されている方法です。特にIT化が進んでいない事業所や、ドライバーの高齢化が進む職場では根強い需要があります。
メリット
- 導入や運用の費用が安価
- 現場での記入が容易で、導入に教育を要しない
デメリット
- 保管スペースの確保が必要
- 記入ミスや漏れが起きやすく、チェックに手間がかかる
- 紛失・破損のリスクがある
- 記録の検索・集計に時間がかかる
電子データとして管理
Excelなどの表計算ソフトや、クラウド型の運転日報システムを利用する方法です。検索や集計が容易で、業務の効率化に直結することから、近年はペーパーレス化やコンプライアンス強化の流れとともに導入が進んでいます。
メリット
- 過去データの検索や集計が容易
- データの誤記・記入漏れを防ぐチェック機能があるシステムが多い
- クラウドを活用すれば、リアルタイムでのデータ共有や遠隔管理が可能
- 保管スペースが不要で、長期保存も容易
デメリット
- 一部の現場ではITリテラシーの壁がある
- システム導入や運用に一定のコストがかかる
既存システムの活用も選択肢に
必ずしも専用の運転日報システムを新たに導入する必要はありません。アルコールチェックシステムなどに付随する日報管理機能を活用することで、運転日報の電子化を効率的に実現できるケースもあります。
すでに導入しているシステムを有効に活用することは、コストや工数を抑えるうえでも賢明な選択肢といえるでしょう。重要なのは、現場の状況や運用体制に応じて最適な方法を選ぶことです。
次章では、当社が提供するアルコールチェック管理クラウドサービス 「デジタル点呼マネージャー・スマート」 の機能について紹介します。
■デジタル点呼マネージャー・スマートの運転日報管理
株式会社インフォセンスが開発・販売する『デジタル点呼マネージャー・スマート』は、白ナンバー事業者向けのアルコールチェック管理クラウドサービスです。 アルコールチェック管理に加えて運転日報の管理機能も標準搭載しており、業務で車両を利用する企業にとって不可欠な両データを一元管理できます。これにより、ドライバーと管理者双方の業務負荷を大幅に軽減できます。 この章では、『デジタル点呼マネージャー・スマート』を活用した運転日報管理の特長をご紹介します。
ドライバーの利用イメージ
- 二種類の動線
ドライバーは、アプリのトップメニューから直接登録するか、アルコールチェック完了画面からそのまま入力に進めるか、2通りの方法を選べます。これによりスムーズな記録が可能です。 - 多彩な記録項目
豊富な記録項目を標準搭載し、さらに自社独自の項目を追加することも可能です。運用方法に合わせて柔軟にカスタマイズできます。

管理者の利用イメージ
- リアルタイム確認
提出された運転日報は、管理者用画面からリアルタイムで確認可能。紙の回収や入力作業が不要になります。 - データの二次利用
CSVやExcel形式での出力に対応しており、車両ごとの走行距離や燃料費・経費をスピーディに集計できるため、データの二次利用がぐっと効率的になります。

■まとめ
運転日報は、単なる業務記録にとどまらず、法令遵守、安全管理・労務管理の実現を支える重要な管理ツールです。特に、アルコールチェックの義務化や点呼実施の厳格化が進む中、記録の正確性や保存体制の強化がこれまで以上に求められています。
近年では、紙やExcelでの管理に加え、クラウド型のアルコールチェックシステムと連携して運転日報を一元管理する方法が注目されています。システムを活用することで、記録漏れや不正の防止、保存・集計の効率化など、多くのメリットを享受できます。
株式会社インフォセンスでは、白ナンバー事業者向けに、アルコールチェック結果と運転日報を一元管理できるクラウドサービス『デジタル点呼マネージャー・スマート』を提供しています。なりすまし防止や改ざん防止機能を備えており、コンプライアンスと業務効率化を両立したい企業に最適なソリューションです。
運転日報やアルコールチェックの管理方法に課題を感じている企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。