【2025年最新情報】アルコールチェック義務化について解説!法改正の経緯や罰則について

アルコールチェックが義務化となった現在、企業が知っておくべき法的リスクや対策は数多く存在します。
ドライバーを抱える事業所のみならず、営業車や社用車を頻繁に使用する企業にも適用されるため、必要な対応を理解しておかないと深刻なトラブルに直面する恐れもあります。
従業員の安全を守り、企業の信頼を維持するためにも、アルコールチェック義務化の背景や具体的な導入ポイントをしっかり把握しておきましょう。
目次
■アルコールチェック義務化の概要
アルコールチェックは、運転業務に従事する人の飲酒を未然に防止する取り組みとして、法令上の義務が明確化されています。もともと飲酒運転の抑止目的で進められてきた制度ですが、近年の交通事故件数や社会的な安全意識の高まりを受け、企業に対してより強い責任が課されるようになりました。
ここでは、飲酒運転の定義や改正の経緯、どのような企業が対象になるのかを解説していきます。
飲酒運転の定義
ここで飲酒検査について、法律や制度に基づく定義を確認しておきましょう。一般的に知られている呼気中のアルコール濃度「0.15mg/l」や「0.25mg/l」という数値は、運転免許の違反点数制度に基づいています。
まず酒気帯び運転と認定される最低ラインである「0.15mg/l」という数値ですが、これは体重70kgの人が缶ビール1本(350ml)を摂取することで達する値だと言われています。
このことから、大多数のアルコール検知器ではこの「0.15mg/l」という数値以上が酒気帯びとして検知される仕様になっています。次の「0.25mg/l」という数値は、運転免許の違反点数制度上、この0.25mg/lを境界として違反点数が区分されています。
酒気帯び運転 | 酒酔い運転 | ||
---|---|---|---|
呼気中 アルコール濃度 |
0.15mg/l 以上 0.25mg/l 未満 |
0.25mg/l 以上 | アルコールの影響により車両等の正常な 運転ができないおそれがある状態 |
違反点数 | 基礎点数 13点 | 基礎点数 25点 | 基礎点数 35点 |
行政処分 | 免許停止 (停止期間90日) |
免許取消し (欠格期間2年) |
免許取消し (欠格期間3年) |
刑罰 | 3年以下の懲役または50万円以下の罰金 | 5年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
以上から、呼気中のアルコール濃度「0.15mg/l」や「0.25mg/l」という数値は、運転免許証の違反点数が広く認知されたものだと分かります。
ここで重要なのは「飲酒後に運転しても、0.15mg/l未満であれば大丈夫」「0.15mg/l未満には罰則がないから安心」とは言えないということです。
0.15mg/l未満は罰則が設けられていなくとも、「飲酒して運転」することは道路交通法に違反する行為です。また飲酒により知覚や判断力が抑制され、交通事故を引き起こす原因ともなります。言うまでもなく大変危険な行為であり、絶対に避けるべきでしょう。
アルコールチェック義務化の改正の経緯

■第一段の法改正が実施される
法改正の第一段として、2022年4月から下記内容の改正法が施行されています。
• 運転前後の運転者の状態を目視などで確認することにより、運転者の酒気帯びの有無を確認すること
• 酒気帯びの有無について記録し、記録を1年間保存すること
上記の改正法施行により、一定台数以上の白ナンバー車を使用する事業所は、乗務前・乗務後にアルコールチェックの実施および記録保存を行うことが義務付けられました。
■第二段の法改正が予定される
第一段の法改正では、目視や呼気の臭いなどから酒気帯びの有無を判断すること、またその記録を1年間保存することが必要となりました。また、第二段の法改正として、2022年10月に下記内容の改正法が施行される予定となっていました。
• 運転者の酒気帯びの有無の確認を、アルコール検知器を用いておこなうこと
• アルコール検知器を常時有効に保持すること
これにより、目視による酒気帯び有無の確認だけではなく、アルコール検知器を使ったアルコールチェックが義務付けられる予定となっていました。
■第二段の改正法施行が延期に
2022年10月から予定されていた改正法の施行は、結果的に延期となりました。これは、アルコール検知器市場の需要が爆発的に跳ね上がったことに加え、世界的な半導体不足の影響もあり、需要に対して供給が追い付かない事態となったことに起因しています。
実際、弊社にもクラウド管理やアルコール検知器について多くのお問合せをいただきましたが、アルコール検知器の確保が困難なことや、お問合せの数に対する対応リソースの限界などもあり、導入までにお時間をいただくケースや、ご希望のスケジュール感によってはお断りせざるを得ないケースもありました。
■第二段の法改正が実施される
2023年6月9日に警察庁よりアルコールチェック時の検知器使用義務化に関するパブリックコメントの募集が開始されました。その後、2023年12月1日に第二段の法改正が実施され、アルコールチェック義務化の対象となる各企業では、アルコール検知器を使ったアルコールチェックが開始されました。
対象となる企業・事業所

具体的には、道路交通法で定められた「安全運転管理者の選任義務」がある事業所が対象です。
安全運転管理者の設置は、道路交通法施行規則第9条の8以降です。
出典:安全運転管理者等法定講習(警視庁)乗車定員が11人以上の自動車にあっては1台、その他の自動車にあっては5台以上を使用している事業所(自動車使用の本拠)ごとに1名を選任する。
・自動二輪車(原動機付自転車を除く)は1台を0.5台として計算。
・業務で使用する車両を台数として計算。
違反した場合に発生する罰則とリスク
「アルコールチェックの義務を怠った」ことに対する、直接的な罰則は現時点では規定されていません。しかし、行政からの是正措置命令や、安全運転管理者等の解任命令に従わなかった場合は、50万円以下の罰金が科されます。
また、飲酒運転に伴う事故が発生した際には、民法で規定される「使用者責任」や、自動車損害賠償保障法で規定される「運行供用者責任」が問われる可能性もあります。
それだけではなく、飲酒運転の事実をメディアなどで報道されることで、企業の信頼は失墜することは免れないため、例え「アルコールチェックの義務を怠った」ことに対する直接的な罰則がないとは言え、アルコールチェックを怠ることはあってはならないという事です。
■企業が取るべきアルコールチェック導入のポイント
アルコールチェックの義務化に合わせて、企業として早めに対策を整えることで、リスクを最小限に抑えられます。以下では、安全運転管理者の選任からアルコール検知器の活用方法、記録の保管手順、さらに就業規則や従業員教育の重要性について順を追って説明します。安全運転管理者の選任と役割
安全運転管理者は、企業がアルコールチェックを含めた安全運転管理を適切に行うための要となる存在です。道路交通法の規定によれば、乗車定員が11名以上の車両を1台以上使用している事業所、またはそれ以外の自動車を5台以上使用している事業所には、安全運転管理者を1名置く義務があります。管理者の役割は運転者の酒気帯び確認にとどまらず、運行計画の作成や安全運転の指導など多岐にわたるため、担当者には相応の知識と責任感が求められます。安全運転管理者の選任にあたっては、原則として20歳以上で運転管理の経歴が2年以上ある従業員を充てる必要があります(副安全運転管理者を置く場合は30歳以上が条件です)。選任後は、所定の用紙を作成して管轄の警察署へ届け出なければならず、これを怠ると罰則の対象となるので注意が必要です。もし法定台数を超える車両を使用しているにもかかわらず、安全運転管理者を選任していなければ、50万円以下の罰金が科される可能性があります。行政からの解任命令や是正措置命令に従わない場合も同様の罰則が適用されるため、コンプライアンス意識を高めるうえでも対応は避けて通れません。
また、車を20台以上保有している事業所では、副安全運転管理者を選任することも義務付けられています。副安全運転管理者を置くことで実務を分担できる反面、選任を怠った際には同じく50万円以下の罰金が科されるなど、ペナルティは厳格です。
アルコールチェックの導入を進めるうえで、安全運転管理者や副安全運転管理者の存在は欠かせない要素となります。企業としては、まず事業所内で業務に使用する自動車台数を正確に把握したうえで、要件を満たす従業員に管理業務を任せ、運行記録やアルコール測定結果などの日々の管理業務をしっかりと監督してもらうことが大切です。
参考:安全運転管理者の業務の拡充等|警察庁Webサイト
アルコール検知器の選定
アルコールチェックに伴うアルコール検知器の使用が義務化されていますが、使用するアルコール検知器の性能については特段の規定はありません。運用イメージを想像し、利用シーンに合ったものを選ぶべきでしょう。アルコール検知器を選ぶにあたって、考慮すべきいくつかのポイントがあります。
【考慮すべきポイント】
・センサータイプ(半導体式、電気化学式もしくは燃料電池式)
・サイズ、形(携帯型、据置型)
・電源方式(乾電池型、充電型、常時給電型)
・データ確認方法(画面表示のみ、内部メモリ型、外部連携型)
・測定結果表示方法(数値、色)
・アルコール検知器協議会認定の有無
このようなポイント理解した上で、自社で重視する要件(コスト、信頼性、運用など)をしっかりと見定めることが失敗しない検討の第一歩となるでしょう。
手早く検討を進めたい場合には、アルコール検知器協議会の認定を受けている認定機器から、要件にあう検知器を探し出してみるというのも良い方法かもしれません。
なお、各ポイントについて別記事でもより詳細に解説しています。
アルコール検知器のご検討を進める際には合わせてご覧ください。
参考記事: アルコールチェッカーの選び方
記録・保管と管理システム
計測結果を記録して保管することも、法令遵守のうえで非常に重要です。記録の保管を行わないと、いざというときに「チェックをしていなかった」と見なされてしまい、法的リスクが高まります。
紙ベースで管理する方法もありますが、日々の運用負担を減らすなら、クラウド型システムやアルコールチェック管理サービスを検討するのも一手です。
データが自動保存されるため、管理者が手動で記録をつける手間を大きく削減できます。
就業規則の見直し
アルコールチェックの実施をスムーズに定着させるには、就業規則や社内規定に飲酒運転防止の方針や検査ルールをしっかり明文化することが不可欠です。違反した場合の懲戒内容や、酒気帯び状態が発覚した際の報告フローなども明確に定めることで、従業員の中に「厳格に運用される」意識を根付かせることができます。
逆に規定があいまいだと、事後にトラブルが発生したときの対応が難しくなるため、導入時に細部まで詰めておきましょう。
従業員への教育と啓発
定期的な講習や研修を実施し、アルコールチェックの重要性と法令違反がもたらすリスクを周知することも重要なステップです。
ただ検査を行うだけでなく、その背景にある事故防止や企業責任の考え方を理解してもらうことが大切です。
職場全体で協力しながらトラブルを防ぐという意識が共有されれば、企業文化の向上につながり、結果的に業務効率や顧客満足度にも好影響をもたらします。
■よくある質問と対処法
アルコールチェック義務化については、企業規模や業種によって事情が異なるため、多くの疑問や不安が寄せられます。ここではよく聞かれる質問を例に挙げながら、対処法を解説します。
Q1. 小規模事業所でも義務化の対象になるのか?
小規模事業所であっても、一定条件を満たせば安全運転管理者の選任義務が発生します。
その結果としてアルコールチェックも必須となるケースがあるため、自社の車両台数や使用状況をよく確認してください。
仮に義務の範囲外だったとしても、安全対策や企業イメージの向上を考えれば自主的に導入するメリットは大きいといえます。
Q2. 過去に酒気帯び運転で検挙された従業員がいる場合の注意点は?
過去に酒気帯び運転を起こした従業員がいる場合、再発防止に向けて特別なフォローや追加研修を行うことが望ましいです。
懲戒処分を含めた就業規則の整備も行い、厳格に運用することで社内の安全意識を高める効果が期待できます。
Q3. アルコール検知器の精度やトラブル対応はどうする?
アルコール検知器は長期間使うとセンサーの精度が落ちる可能性などがあるため、定期的な点検が必要です。
メーカーや販売代理店による保守サービスを正しく利用し、定期的なメンテナンスを怠らないようにしましょう。万が一機器が故障した場合は、サブ機器を準備しておくか、すぐに修理や交換の対応ができる業者と契約しておくと安心です。
■まとめ
アルコールチェック義務化は、単なる法令対応にとどまらず、企業の安全管理や社会的信用を左右する大きな要素です。適切な安全運転管理者の選任やアルコール検知器の活用、就業規則への明確な規定化と従業員教育によって、飲酒運転のリスクを大幅に低減できます。一方で、運用コストや日々の管理業務が増えることに負担を感じる現場担当者や経営者も少なくありません。そこで注目されているのが、クラウド技術を活用したアルコールチェック結果のクラウド管理です。「デジタル点呼マネージャー・スマート」は、アルコールチェック結果管理のクラウド化や、リアルタイムでの計測状況の確認など、煩雑になりがちな点呼・確認作業を効率化する多彩な機能を備えています。安全運転管理者が担当するアルコールチェックや運転日報管理のプロセスを一括で管理できるため、導入によって業務負荷を軽減しつつ、飲酒運転や法令違反のリスクをしっかり抑え込めるでしょう。
社会的責任と従業員の安全を守るためにも、デジタル点呼マネージャー・スマートをはじめとしたクラウドサービスの活用を検討してみてはいかがでしょうか。
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