正しいアルコールチェッカーの数値の見方とは?知っておきたい基準と使い方

飲酒運転の防止に欠かせない「アルコールチェッカー」。しかし、測定数値の基準について正しく理解していますか?
呼気中のアルコール濃度がどの程度でどのような違反となるのか、数値による判断基準や罰則を知ることは安全運転のために不可欠です。
この記事では、アルコールチェッカーの仕組みや選び方、測定数値の判断基準について解説します。適切な知識を身につけ、安全運転を心掛けましょう。
目次
飲酒運転の防止に欠かせない「アルコールチェッカー」。しかし、測定数値の基準について正しく理解していますか? 呼気中のアルコール濃度がどの程度でどのような違反となるのか、数値による判断基準や罰則を知ることは安全運転のために不可欠です。
この記事では、アルコールチェッカーの仕組みや選び方、測定数値の判断基準について解説します。適切な知識を身につけ、安全運転を心掛けましょう。
■アルコールチェッカーとは
アルコールチェッカーを理解するうえで重要となるのは、その役割と種類、またどのようにアルコール濃度を測定するのかを知ることです。以下で詳しく解説します。
アルコールチェッカーの役割と種類
アルコールチェッカーとは、呼気中のアルコール濃度を測定するための装置です。飲酒運転防止に向け、企業に課された義務化への対応や、個人の自己管理のために活用されています。

アルコールチェッカーのセンサーには主に半導体式と電気化学式(燃料電池式)の2種類があります。半導体式は手頃な価格で入手しやすいことが最大の特徴です。しかしその反面、誤検知が出やすいというリスクや、センサーの寿命が短いという欠点があります。
一方、電気化学式(燃料電池式)は測定精度が高くセンサーも長寿命の製品が多いため、長期間に渡り安定した性能を発揮することができますが、半導体式のものと比べてやや高価です。
適切なアルコールチェッカーを選び、正しく使用することで、安全運転の判断材料となり、飲酒運転のリスクを未然に防ぐことができます。
参考記事:アルコールチェッカーの維持管理とは?安全運行のために知っておくべきポイント
どのようにアルコール濃度を測定するのか?
アルコールチェッカーは、呼気中のアルコール濃度を測定し、その結果を数値として表示したり、データとして外部へ出力する装置です。それでは、どのようにしてアルコール濃度を測定しているのでしょうか?
先述したように、 アルコールチェッカーには半導体式と電気化学式(燃料電池式)があり、それぞれアルコール反応を検出するための仕組みが異なります。
半導体式は、センサー表面に付着する酸素量により変化する電気抵抗値を参考に、アルコール反応を検知する仕組みです。飲酒を行うことで呼気中の酸素量が減少し、電気抵抗値が低くなります。したがって、電気抵抗値が低ければ低いほど、呼気中のアルコール濃度が高いことになります。
一方、電気化学式(燃料電池式)は、呼気に含まれているアルコールを燃料として電気を発生させることで、アルコール反応を検知する仕組みです。つまり、電気の発生量が多いほど、呼気中のアルコール濃度が高いことになります。
■飲酒運転と見なされるアルコール濃度の基準値
呼気中のアルコール濃度がどれくらいで「飲酒運転」と見なされるのでしょうか?
以下では、飲酒運転となる呼気中のアルコール濃度の基準値と飲酒運転に繋がる落とし穴について解説します。
違反種別 | アルコール濃度 | 違反点数 | 行政処分 | 罰則 |
---|---|---|---|---|
酒気帯び運転 | 0.15 mg/L以上 0.25 mg/L未満 |
13点 | 90日の免許停止 ※前歴およびその他の累積点数がない場合 |
3年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
0.25 mg/L以上 | 25点 | 免許取消し ※欠格期間2年 |
||
酒酔い運転 | 数値基準なし | 35点 | 免許取消し ※欠格期間3年 |
5年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
引用元:飲酒運転の罰則等 (警視庁)
飲酒運転には、「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」があります。また「酒気帯び運転」の中でも基準が分かれており、違反の点数や行政処分、罰則は呼気中のアルコール濃度によって決まります。
0.15mg/L以上0.25mg/L未満のアルコールが検出されると、違反点数が13点となり、その他、90日間の免許停止や、3年以下の懲役または50万円以下の罰金という行政処分や罰則が科されます。
0.25mg/L以上のアルコールが検出されると、違反点数が25点に跳ね上がり、免許取消しといった更に重たい行政処分が科される形なります。
一方「酒酔い運転」にはアルコール濃度の数値基準がなく、飲酒により正常な運転ができない状態とみなされることで該当します。「酒気帯び運転」に比べてかなり重たい罰則が科されます。「酒酔い運転」にはアルコール濃度の基準がないため、たとえ検出された値が0.15mg/L未満のアルコール濃度だったとしても、該当してしまう可能性がある点はしっかりと認識しておく必要があります。
なお、道路交通法第65条第1項では「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。」と規定されており、例え0.15mg/L未満だからといって運転しても良いことにはならないということは、改めてよく理解しておく必要があります。
アルコール数値は、飲酒の量や体質によって変化するため、「少ししか飲んでいないから大丈夫」と思っても基準値を超えてしまう可能性があります。そのため、アルコールチェッカーを活用して正確な数値を確認することが、安全運転の第一歩です。適切に測定し、基準値を理解することで、飲酒運転のリスクを回避しましょう。
■罰則の対象者は誰になるのか


飲酒運転に関する罰則は、実際にハンドルを握る運転者だけでなく、さまざまな立場の人が対象となります。「自分は運転しないから関係ない」という考えは非常に危険です。以下では、罰則が科される対象者ごとに詳しく解説します。
運転者・車両等の提供者
運転者本人ならびに運転者へ車両等を提供した人には、飲酒運転の違反種別に応じて以下の罰則が科されます。
【酒酔い運転】5年以下の懲役 または 100万円以下の罰金
【酒気帯び運転】3年以下の懲役 または 50万円以下の罰金
運転者
実際にアルコールを摂取した状態で車を運転した場合、道路交通法の酒気帯び運転・酒酔い運転の対象となり、免許停止や取消だけでなく、懲役や罰金といった刑事罰が科されます。
呼気中アルコール濃度が基準値(0.15mg/L以上)に達していないと思っていても、少しの誤差や測定のタイミングによって基準値を超える可能性があるため、飲酒後は絶対に運転しないことが重要です。
車両等の提供者
車の所有者や管理者が、ドライバーが飲酒した状態であることを知っていながら車を貸し出したり、運転させたりした場合も罰則の対象になります。
とくに家族や知人など、近しい相手であっても、「少しくらいなら大丈夫だろう」と安易に考えて車を提供すると、深刻な事故や自分自身への処罰に繋がるリスクがあります。
飲酒運転を防ぐためには、単に自分が飲まないだけでなく、周囲の人が飲酒した状態での運転を決して容認しない姿勢が欠かせません。
酒類の提供者・車両の同乗者
運転者へ酒類を提供した人と車両に同乗した人には、飲酒運転の違反種別に応じて以下の罰則が科されます。
【酒酔い運転】3年以下の懲役 または 50万円以下の罰金
【酒気帯び運転】2年以下の懲役 または 30万円以下の罰金
種類の提供者
運転者に対して酒類を提供した人も、飲酒運転を助長したと見なされる場合には罰則の対象です。たとえば、自宅や飲食店などで「運転する予定の人にアルコールを提供した」などの行為は罰則の対象となります。
車両の同乗者
同乗者に関しても、ドライバーが飲酒していると知りながら車に乗った場合には、罰則の対象となります。「運転者が酔っているかもしれない」と疑いながらも黙認する行為は、万が一の事故発生時には同乗者自身が重傷を負ったり、他者への損害を発生させたりすることにも繋がります。
飲酒運転の疑いがある状況では、同乗を断る、代行サービスやタクシーを利用するなどの対策をとりましょう。
企業の代表者や責任者
従業員が飲酒運転を行った場合、企業や事業所には以下のような行政処分が下される可能性があります。
事業停止や車両使用停止
従業員による飲酒運転があった場合、一定期間の事業停止や車両の使用停止といった厳しい処分が下されることもあり、企業経営に甚大な影響を及ぼします。
また、安全運転管理者の解任命令や運行管理者の資格者証返納命令が下される場合もあり、企業や責任者への罰則も重いものとなります。
民事訴訟
企業が従業員の飲酒運転による事故を防止できなかった場合、運行供用者責任(自動車損害賠償保障法第3条)や使用者責任(民法第715条)が問われる可能性があります。
運行供用者責任とは、従業員が業務中に起こした事故について、車両の管理者としての責任を企業が負うものであり、被害者に対して損害賠償責任を負う可能性があります。
また、使用者責任では、従業員の過失による損害が発生した際に、その監督者として企業が賠償責任を負うことが求められます。アルコールチェックの徹底により、こうした法的リスクの軽減が期待できます。
企業イメージの失墜
飲酒運転による事故は社会的な非難を浴びやすいため、企業名が公表されれば信頼の失墜に直結します。
顧客や取引先からの信用を失うことになり、長期的な経営ダメージに繋がります。
企業イメージの維持・向上のためにも、アルコールチェック体制の整備と徹底した教育が欠かせません。
■アルコールチェッカーの正しい使い方

アルコールチェッカーを正しく使うには、測定前の準備・適切な測定方法・結果の確認の3つが重要です。以降、これら3つの観点について詳しく解説します。
測定前の準備
最後の飲食や喫煙からは、極力20分~30分ほど時間をあけることが望ましいとされています。
喫煙後、口内に残った一酸化炭素の影響でセンサーが反応する可能性があります。
飲食の場合も、アルコール反応が出やすい飲食物の影響により、アルコールチェッカーが反応してしまう可能性があるため注意が必要です。そのため、測定前は、水でうがいをし、口内に食べ物や飲み物などが極力残らない状態にしましょう。
適切な測定方法
正確な測定結果を得るためには、使用するアルコールチェッカーの取扱説明書に従い、正しい方法で呼気を吹きかける、または吹き込むことが大切です。
吹き込み式の場合、呼気の圧力を一定に保ち、センサーが正確に反応するように意識します。急激に強い圧力で吹き込むと正確な測定結果が得られない可能性があります。
また、吹きかけ式の場合、屋外の風速が強い場所で測定すると、誤検知に繋がる場合もあるため、測定する際の周辺環境にも配慮しましょう。
結果の確認
最後に、数値の確認を怠らないようにしましょう。測定誤差を考慮して複数回測定し、安定した測定結果が得られるか確認すると安心です。
アルコールチェッカーを正しく使用し、飲酒運転を未然に防ぎましょう。アルコールチェック義務化の対象となる事業所に所属する従業員や、緑ナンバーを掲げて運送事業に従事する運転手には、記録簿へ測定結果を記入し、管理者による確認と1年間の保存が義務付けられています。日々の記録を徹底し、忘れないよう注意しましょう。
参考記事:アルコールチェック記録簿の運用ガイド!義務化に基づく記載内容と運用方法について解説
■実際の測定数値と判断基準
以降に、アルコール数値に関するよくある疑問を纏めています。是非参考にしてください。
アルコール数値が0.10mg/Lの場合、運転しても良いか?
道路交通法では、呼気中アルコール濃度が0.15mg/L以上で飲酒運転と見なされるため、飲酒運転の基準と照らし合わせた場合、0.10mg/Lは基準値を下回ります。しかし、たとえ少量でもアルコールを摂取したら運転は控えるべきです。
アルコールによって受ける身体の変化は個人差があり、微量であっても反応速度や判断力に影響が出る可能性があります。加えて、アルコールチェッカーの機器精度や測定環境によって数値が変動し、誤差が生じる場合もあります。また、前述している通り、道路交通法第65条第1項では「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。」と規定されています。
安全運転を最優先に考えるなら、数値が0.10mg/Lであっても「アルコール反応が検知されたら乗らない」という姿勢を貫くことが、ドライバーとしての責任といえるでしょう。
アルコール検知後に「運転可能」と判断してもよい基準は
「運転可能」と判断するためには、測定結果のアルコール濃度が0.00mg/Lになっていることが重要です。
たとえ飲酒をしていない場合であっても、直前に摂取した食品や喫煙等の影響により、それらの含有成分がアルコールとして検知される場合があります。このような場合は、うがいをする等して時間を少し開け、測定結果が0.00mg/Lになった事を確認・記録した上で運転を行うようにしましょう。
「飲酒運転の基準には達していないから大丈夫」という誤った解釈で運転を行うことは非常に危険です。安全運転を心掛け、数値を正しく判断し、適切な行動を取ることが最も重要です。
■まとめ
アルコールチェッカーの数値は、運転前後に飲酒の影響を確認するために非常に重要です。
呼気中アルコール濃度が0.15mg/L以上で「酒気帯び運転」と見なされ、罰則が科されます。さらに0.25mg/L以上では、より厳しい処罰が適用されます。
「酒酔い運転」には数値の基準がない上に、「酒気帯び運転」より非常に厳しい処罰が適用されます。
事故なく安全安心な運転ができるように、アルコールチェックの数値の見方を正しく理解し、適切な方法で測定・運用をするようにしましょう。